「広島SF大全」スタートのお知らせ

はじめましての方には、はじめまして。
すっかりおなじみの方には、どうもこんちわ、またぼくたちです。

というわけで、今回の第52回日本SF大会「こいこん」でも、開催地にまつわるSF作品についての評論記事をアップしていく、「広島SF大全」の企画をやらせていただくことになりました。

企画を推進するのは、主に、「SF評論賞」の受賞者からなる「SF評論賞チーム」のメンバーです。とはいえ、場合によっては意外なサプライズゲストが、いきなり魔が差して、産みたてほやほやの活きの良い記事を投稿したりしてくれるかもしれません。してくれないかもしれません。予定は未定です。

この「ご当地SF」の企画、考えてみれば、最初は2010年の「TOKON10」から始まったわけですから、2011年の「ドンブラコン」、2012年の「Varicon」と来て、もう四度目になるわけですね。SF大会常連の方たちには、そろそろ評論賞グループの顔ぶれも(一部の有名どころはもとより)ご記憶いただけるようになった頃合いなのではないでしょうか。

もっとも、その中には、何度も同じことを繰り返している割にはいっこうに文章が上達しない、開催地の土地柄に密着していない、もっとプロパーSFの作品を論じて欲しいなどなど、企画の内容に対して、色んなご不満をおもちの向きもいらっしゃるかもしれません。でもまあ、考えてみて下さい。落語の寄席だって、同じ噺を百回高座にかけて、はじめて一人前の芸になると言います。その伝でいけば、ぼくたちだって、第149回日本SF大会が開催されるそのときまでは、ちょっとしたモラトリアムを主張させてもらったっていいんじゃないですか?

さりとて、ぼくたちだって、何ものんべんたらりと手をこまねいているわけではありません。じつは、「ドンブラコン」のブログで連載された「静岡SF大全」の記事の一部を元にして、静岡の出版社・創碧社から『しずおかSF 異次元の扉〜SF作品に見る魅惑の静岡県〜』というタイトルの本が出版されました。これは自画自賛なのですけれど、収録されている原稿はどれも粒ぞろいの名篇な上に、YOUCHANさんがデザインされたキュートな表紙は一見の価値ありです。おまけに値段はたったの500円と超リーズナブル! これはもう買うっきゃない!

とまあ、宣伝はさておいても、SF大会が開かれるたび、その土地をモチーフにしたSF作品のデータを集計して、土地の風土と作品の趣向との関係を問うという作業自体は、けして無意味ではない――というより、大いに意義のあることだと、少なくともぼくはそう思います。何と言っても、SFを好きでいることも、地方に密着して生きることも、周縁へのまなざし、みたいなものをその根っこにもっているはずですからね。

さてそこで今回の「こいこん」です。これまで「ご当地SF」の企画が、東京、静岡、北海道と論じてきた中でも、今度の広島は、また一段と複雑な土地なのは言うまでもありません。

もちろん、太平洋戦争が残した爪痕、原爆の問題があります。ご存知の方もいらっしゃることと思いますけれど、第一回SF評論賞で特別賞を受賞された鼎元亨さんは、同じく原爆に見舞われた都市、長崎のご出身で、被爆者の苦悩については誰よりも真剣に考え続けている人です。ひょっとしたら、鼎さんは、この方向から、広島に切り込んだ記事を書いてくれるかもしれません。

それに、原爆というテーマは、3・11以降の原子力発電、そして放射能汚染の問題を、当然ながら連想させます。この問題に関しては去年、藤田直哉さんと海老原豊さんが『3・11の未来――日本・SF・創造力』という評論集の編集にたずさわったことが未だ記憶に新しいのではないでしょうか。同書では、石和義之さんも座談会に参加というかたちで、ご自身の所見を語っていました。そして、最近さまざまな分野で活動の幅を広げている岡和田晃さんもまた、この問題に関心をお持ちです。評論のアクチュアリティというものに鋭敏なこれらの方たちが、広島に目を向けるとき、いったいどんな論考が生まれてくるのか? ぼくは個人的にとてもたのしみにしているのですけれど、みなさんはいかがですか?

とはいえ、こういう誰もがすぐ思いつくテーマを挙げることしかできていない時点で、このあいさつは、あまり良いイントロダクションになっていないかもしれませんね。過去への責任とか負い目とかに縛られず、もっと色んな角度から広島を論じる評論だってあって良い。その上で、既存の社会通念を打ち破るような、ダイナミックな記事を書くことができたなら、それこそ評論家冥利に尽きるというものでしょう。いずれにせよ、これからスタートしようとするこの企画は、まだ未来に向けて開かれていて、まっさらな白紙です。この白紙の上に、はたしていかなる批評の足跡が刻まれていくのか? もしよろしければ、ぼくたちと共にその道行きをたどって、そして一緒に楽しんでいただけるなら、「広島SF大全」担当者一同、欣快の至りです。(横道仁志)

カテゴリー 広島SF大全
投稿者 SF評論家グループ

コメント

コメント(3)

  1. 宮本 英雄

    うえむらちか「灯籠」ハヤカワ文庫JAを取り上げてください。
    広島独特の灯篭(お盆にお墓にたてます)がテーマで、舞台も広島です。

    返信
  2. 広島SF大全18『灯籠』 : こいこんblog

    [...] 15日になりました。 こいこん開催まで、あと5日間です! 今日の作品は、コメント欄でリクエストをいただいた『灯籠』です。 リクエストして下さった宮本英雄さま、ありがとうござい [...]

    返信
  3. 横道仁志

    宮本英雄さま

    もうまもなく、こいこんの本番がはじまりますね。
    リクエストありがとうございました。
    一年越しでお返事をお返しすることになってしまいましたけれども、宮野由梨香さんが『灯籠』をテーマに記事をお書きになりましたので、ここにご報告させていただきます。
    お盆をテーマにした小説にふさわしく、7月15日に記事を投稿されたあたり、宮野さんのこだわりが伺える内容になっていると思います。
    もしおたのしみいただけましたら欣快に存じます。

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